Vol.4 家族の一員としてしつけ
繁殖ボランティアから子犬を引き継ぐ育成ボランティアのことを「パピーウォーカー」と呼びます。「子犬(パピー)を歩かせる人(ウォーカー)」の意味で、生後50日の子犬を一歳になるまで飼育。2月上旬、今年初めてとなる「委託式」があり、浜田さんに、繁殖犬アークが産んだホープを預かっていただくことになりました。
子犬は、パピーウォーカーの家族の一員として暮らしながら人間社会のルールを身に付け、家庭での触れ合いによって人とともに生きる喜びを学びます。日本で活躍する盲導犬の多くはラブラドルレトリバー。ほかの犬種に比べると病気になりにくく、判断力があり、人なつっこい外見から連想されるように、性格が穏やかなことが理由。しかし、しつけが簡単なわけではありません。これまで6頭の子犬を育てられた浜田さんも、1頭目のサリーを預かっていたときはとても苦労されていました。
最初の悩みは、排せつのしつけです。外出先で盲導犬が勝手に排せつをすると困るので、号令によって排せつができるよう、子犬のときに教えなければなりません。そこで、朝起きると子犬を庭に連れていき「ワンツーワンツー」と掛け声を繰り返します。子どもがお母さんの「シー、シー」という声でおしっこをするのと同じで、号令が掛かると排せつをするように覚えさせるのです。
ところが、好奇心がおう盛なサリーは、庭に出ると小石や咲いたばかりの花を口にするなど遊んでばかり。「おしっこはしないのかな」と思って室内に入れた途端、床を濡らしてしまう日々が続いたそうです。
子犬の成長は早く、預かったころ5Kgほどだった体重は生後6ヶ月で約30Kgになります。パピーウォーカーと子犬は、朝食の後に散歩へ出掛け、並んで歩く訓練をしますが、このころには犬の力が強くなり、犬に引かれるような格好になり、体力的にも大変です。
その後、浜田さんとサリーに飼育講習会でお会いしたとき、ひじに包帯を巻いていたので、理由をうかがうと「関節炎になりまして」と、苦笑いされていました。
Graceful Land 代表 桜井昭生
※文中の人名、犬の名前は個人情報への配慮のため仮名とさせていただいています。